遠視への効果
オルソケラトロジーで遠視を矯正することも可能ですが、結論から言えば遠視の矯正手段としてオルソケラトロジーを使用している患者さんはあまりいません。
その理由として、近視の矯正に比べて遠視の矯正が技術的にはるかに困難であることが挙げられます。
オルソケラトロジーはレンズによって角膜の形を変えて視力の矯正を目指すものです。近視の場合はレンズの中央をフラット化(平ら)することで角膜の屈折率を正常なものにしてゆきますが、遠視の場合はスティープ化(丸み)させて屈折率の改善を目指さなければなりません。
角膜はフラット化するよりもスティープ化させる方が難しく、あまり大きくスティープ化させてしまうとレンズと角膜の間に空気が入り込んでしまうといった問題点もあります。
結果として遠視の屈折率を減少させることのできる範囲は小さなものとなってしまい、患者にとってあまり効果を実感することはできません。
ただし、オルソケラトロジーでの遠視矯正の例は少数ながらありますので、もしオルソケラトロジーで遠視を矯正したい場合は治療の効果にある程度の制約がかかってしまうことに留意して、遠視矯正にも知識の深い医師の方に相談してみましょう。
オルソケラトロジー用語集
オルソケラトロジーを使う上で覚えておくと便利な用語集です。なるべく専門用語などは使わずに簡単な言葉で説明しているので、知っておくといざという時に役に立ちます。あくまで「患者が」知っておくと便利な情報だけを集めました。
各ページの文章量も少ないので、さっとみるだけでもためにあると思います。
〔カ行〕
〔サ行〕
〔タ行〕
〔ハ行〕
〔マ行〕
〔ヤ行〕
〔ラ行〕
ドライアイの患者への適応
ドライアイの患者でもオルソケラトロジーが使用可能かどうかは眼科医達の間でも意見が分かれ、常に論争となっています。なぜなら一般的にドライアイの患者にコンタクトレンズは適していないと言われ、使用しないように指導する医師が多いからです。
結論から言えば、軽度のドライアイであれば治療は可能な場合が多いです。
その理由として、まずは特殊なレンズのデザインにあります。オルソケラトロジーはレンズの中心部が扁平になっており、周辺部が丸みを帯びた形状になっているため、その構造上、レンズと瞳の間に涙液がたまりやすくなっています。
そのため、通常のコンタクトレンズよりも角膜に潤いを与えることができるので、角膜に酸素を供給しやすくなっており、眼が乾きやすいドライアイの患者でも治療が可能である場合があります。
次にオルソケラトロジーは寝ている間にも装用できるという点があります。
寝ている間はまぶたを閉じているため瞳全体が常に涙液で満たされている状態になります。ドライアイでも眼を開けていなければ角膜は乾きにくくなるため、オルソケラトロジーの場合は眼が酸素不足になる可能性が低くなるのです。
また、オルソケラトロジーを開始する際には医師からドライアイであるかどうかの問診がありますので、その時にドライアイである(もしくは疑いがある)ことを伝えると短い時間で視力が矯正できるようにプログラムを組んでくれると思います。
これらの理由により、軽度のドライアイであればオルソケラトロジーを実施するという医師は多くいます。
しかしながら、実際に「どの程度のドライアイならば使用できるのか」ということを一概に断言するのは難しく、最終的には医師の判断によるところが大きいです。
軽度のドライアイの患者でもオルソケラトロジーは使用可能ですが、定期健診を忘れずに受けることには特に気を使って治療を進めましょう。
※ドライアイの場合で使用が可能と判断されても眼に痛みなどの異常を感じた場合にはすぐに装用を中止して医師に相談しましょう。問題が起こったとしても早期に発見することが大切です。ドライアイの方は特に注意しましょう。
職業上での注意点
特定の職業に就く上で裸眼視力が必要な場合、その基準を満たすためにオルソケラトロジーを使いたいという方もいらっしゃると思います。
例えば、消防士、警察官、パイロット、スポーツ選手などは裸眼で一定以上の視力が必要となり、要求された基準をクリアするためにオルソケラトロジーを使う場合です。
実際に多くの人が職業上で要求された裸眼視力を得るためにオルソケラトロジーを使用していますが、オルソケラトロジーで裸眼視力を得て資格試験に合格した場合、患者にはその視力を維持する義務と責任が発生します。
もし資格取得後に故意に治療を止めてしまった場合は、資格取得のために一時的にオルソケラトロジーを使用したことになり、オルソケラトロジーを資格取得のための抜け道として利用したことになります。
職業上の規定として決められた裸眼視力はその職業を安全に遂行する上で決められた基準です。違う言い方をすれば、その基準を故意に維持しなくなった場合は職業上の安全な遂行が不可能になり、資格を返上する必要があるとも言えます。
万が一、資格取得後にオルソケラトロジーを中止したことによる不十分な視力が原因となって事故が起きた時は患者に(場合によっては医師にも)道義的、法律的な責任が問われる場合があります。
職業上の基準を満たすためにオルソケラトロジーを使用することを検討している方は必ず上記のことに留意して資格の取得に励んでください。
※なお、各職業ごとに決められた裸眼視力は必ず基準を設けた企業、団体に確認をとってください。また、オルソケラトロジーによる視力矯正を裸眼視力として認定しているかどうかも各団体にご確認ください。
●こんなケースにも注意
オルソケラトロジーは角膜の形を変えて近視の矯正を目指すものです。私自身の体験記でも述べていますが、治療開始初期には視力が安定しない日があります。例えばスペクタクルブラー(眼鏡の霞)とよばれる状態になってしまうというケースです。
治療が進んで安定期に入った時にはこのような問題が起こる可能性は低くなりますが、極稀に安定期でもそのような症状が起こる場合があります。これは就寝時にうつぶせに寝てしまってまぶたに圧力がかかり、レンズが瞳の中心からわずかにズレてしまった場合に起こるケースが多いです。
特にスペクタクルブラーと言われる状態になると眼鏡で視力を矯正をしようとしても視界全体に霧のようなものがかかり、眼鏡による視力矯正が全く効きません。
ゆえに、長距離トラックの運転手や運送業者のドライバーなどの、仕事で運転する機会が多い方はこういったことが起こりうるのを常に念頭におきましょう。
職務上で危険な作業に従事する方は必ず医師に相談の上で治療を行ってゆくのが大事です。
治療の到達点を考える
オルソケラトロジーを開始するには自分の「治療の到達点」を明確に設定してのぞみましょう。「治療の目標」と言い換えても良いかもしれません。
例えば、治療の到達点(目標)として下記のよう例があります。
▼近視の進行を抑えるため
▼消防士、警察官、パイロット、スポーツ選手などの裸眼である程度の視力を要求される職業に就きたいときに、その裸眼視力をクリアするため
▼メガネ、コンタクトレンズ無しでスポーツやレジャーを楽しみたいため
▼強度近視の人であれば、室内での作業や生活に支障が無い程度まで視力を回復させたいため
▼日常生活でメガネやコンタクトレンズを使わなくてよい程度まで視力を回復させるため
このように、ただ単に漠然と「視力を回復させたい」と望むのではなく上記のように「自分なりの明確な目標」がある場合は、医師にそれを伝えると各個人の要求を満たすような水準まで視力を回復するようにプログラムを組んでくれると思います。
例えば「裸眼視力0,6以上」が要求される職業に就きたいという人の場合、「視力1,2を目標としてオルソケラトロジーを始めたが、0,7までしか回復しなかった」という場合でも治療は成功と言えるでしょう。そしてその後は視力0.7を維持できるようなプログラムを医師が組んでくれるはずです。
また、「スポーツやレジャーをメガネやコンタクトレンズ無しで楽しみたい」という人は1.0の視力が得られなくても、0,6程度の視力を得ることができれば成功と言えるかもしれません。
オルソケラトロジーを使用して裸眼視力「1,5」を達成した患者さんもいます。しかし、たとえその水準まで届かなくても「治療が成功した」と言える場合もあるでしょう。
医師とうまくコミュニケーションをとり、「自分がどの程度の視力を求めているか」を伝えて、自分のゴールに向かって治療を進めてゆくことが大事です。
医師の技術に関して
日本においてオルソケラトロジーが始まったのは2000年5月と言われています。つまり、メガネや通常のコンタクトレンズと違って歴史はまだ浅く、技術が不十分である医師もいるかもしれません。
というのも、どんな職業でもそうですが技術は知識の他に経験を重ねて会得するものであるからです。
歴史が浅いということは必然的にオルソケラトロジーを始めて日の浅い医師も多くなり、結果として技術を蓄積する途上段階であるために技量が未熟である医師もいるかもしれません。
特にオルソケラトロジーの場合は角膜の形を十分な視力が戻るように調整してレンズをデザインする高度な技術と、患者の治療の過程を詳細に把握し、そのつど治療の方針を決定してゆく柔軟性が大切になってきます。
そのため、発祥の地である米国内ではオルソケラトロジーへの知識や理解が不十分である医師が安易に治療を開始することに懸念をいだく専門家もいます。
日本においてもこれは同様で、オルソケラトロジーに対する知識や理解が不十分なまま安易に治療を開始しようとする医師に疑問を呈する専門家もいらっしゃいます。
実際に治療を開始する場合には料金や通院時間といった基準だけで決めるのではなく、オルソケラトロジーでの治療実績や評判などを比較し、経験を積んだ医師の下で受けるのがよいと思います。
ただし、当然ながら「医師の治療実績が無い=安心できない」というわけではありません。
なぜなら最初から経験豊富な医師などいないからです。経験が浅くてもオルソケラトロジーに対する知識、理解が深い医師であれば問題はないと言えるでしょう。
治療する医院を決めるときは慎重に、しかし慎重になりすぎて治療を始めることができないということが無いようにしましょう。
発展の歴史
オルソケラトロジーの歴史の原点は初期のコンタクトレンズ使用者の人たちの体験から発生しました。
コンタクトレンズをはずした後にメガネを使ったときに、「強い霞み」を訴える患者たちがいたのです。これはコンタクトレンズによって角膜の形が変わってしまい、眼の屈折率が変化したためにメガネが合わなくなってしまったという、いわば偶然のオルソケラトロジー体験でした。
そして当時の眼科医の一部が「この角膜の変化をうまくコントロールすることができれば近視治療に役立つのではないか?」と考えたところから『オルソケラトロジー』の歴史が始まったのです。
その歴史は眼科医達による試行錯誤の連続でした。
当時は今と違ってレンズの材質やデザインの技術、患者の角膜の形状をはかる技術が未熟であったため、「患者ごとに違ったレンズを作る」、「寝ている間に着用する」といったことが難しかったのです。
しかしながら、歴史を重ね、技術の進歩とともにレンズの精密なデザインが可能になり、高酸素透過性の素材が開発されることによって「患者に合わせたオーダーレンズ」を作ることができるようになり、さらにより短時間で患者の角膜を矯正することができるようになり、一番のメリットとも言える「寝ている間の着用」が可能になったことによってオルソケラトロジーは大きく発展してゆき、現在では米国だけで120万人以上の患者が治療を受けることになったのです。
しかし、私はまだ世界のオルソケラトロジーの歴史はまさに発展の最中であると思います。本場の米国をはじめ、イギリス、フランス、台湾などでもオルソケラトロジーの患者数は増え続けていますが、「近視矯正の手段」の中では残念ながらまだ少数派であると言わざるを得ないでしょう。
この日本においては厚生労働省がオルソケラトロジーを正式に認可していないために、「本当の歴史」自体がまだ始まっていません。「日本での歴史」が本当に始まるときは厚生労働省が正式に認可した時であると私は思います。
様々な国でオルソケラトロジーの歴史が発展してゆく中で、日本だけがその歴史から取り残されてしまうのは悲しいことです。
ぜひあなたもオルソケラトロジーを始め、「日本での歴史の先駆者」になってほしいと思います!
●日本においての歴史
日本でのオルソケラトロジーの歴史は、2000年5月に『三井メディカルクリニック』の三井岩根先生が治療を開始したのが始まりと言われています。
三井先生が先駆者となったことによりオルソケラトロジーは徐々に医師の間でも浸透してゆき、今では日本国内でも多くの医院が自由診療としてオルソケラトロジーを処方しています。
しかしながら、いまだに日本でのオルソケラトロジーは厚生労働省の認可がとれておらず、米国からの輸入に頼る状況が続いています。
残念ながら日本においては歴史の入り口に立っているものの、「その門が未だ開かれず」ということになっています。
真の歴史が始まるときは厚生労働省がオルソケラトロジーを認可し、国内でも生産可能になった時です。その日がなるべく早く来るように祈りたいと思います。
強度近視の矯正は可能?
オルソケラトロジーによる近視矯正にも限界があり、強度近視の患者が治療によって裸眼で好視力を得ることは難しいと言われています。
人間の角膜の厚みには限界があるため、レンズによって角膜の形状を変えるのにも限界があるからです。また、同じく角膜の柔軟性にも限界があるために、これらの要素がからみあって「強度近視の矯正は難しい」というのが眼科医の間では定説となっています。
一般的には屈折率「-7D」くらいが矯正の限界だと思ってください。
ただし、絶対に矯正が不可能であるとは言い切れず、強度近視の人でも裸眼で好視力を得られたケースもあります。これは角膜の厚みや柔軟性が個人ごとに異なるからです。
こればかりは実際にオルソケラトロジーを使用してみるまでは何とも言えませんので、強度近視の方がオルソケラトロジーでの近視矯正に望む場合は、治療の効果が患者の眼の状態ごとに左右されることを念頭において医師とよく相談してみましょう。
場合によっては無料でテストレンズを貸し出してくれる眼科もあるので、実際にどのくらいの効果があらわれるのか試してみるのも良いでしょう。
強度近視の矯正も可能になった!新たな技術・『オサート』
従来のオルソケラトロジーでは強度近視や乱視を矯正することは難しかったのですが、「0,01以下の強度近視や、強度乱視、遠視、老眼」までもを矯正できる『オサート』という技術が開発され、話題を呼んでいます。
実際に「0,01の強度近視」の患者さんが「1,5」まで視力を回復させた例もあるため、もし「強度近視」が原因でオルソケラトロジーを諦めていた人は検討する価値が大いにあると思います。